********************************************************************** 特別企画:いろはお題『A Strange Days 〜六兎結夜の奇妙すぎる生活〜』 =================================================================== い 異人館で逢いましょう ------------------------ 「Then, did you come from Ireland?」 「……む?」  いつもと同じようにIC水島の門をくぐると、全身黒ずくめのグラサン=前野 氏が当たり前のように異国の言葉操っていた。 「It is so. It is interested in the Japanese culture.」  相対しているのは、私と同世代ぐらいの金髪の女子だった。いや、欧米系の 人は東洋系の人より結構大人っぽく見えるそうなので、少し年下くらいかも知 れない。 「The acquaintance who lives near here has a woman from Ireland.」 「Is it true? I really want to try to meet.」  流暢に会話が進んでいく。絶句して立ち尽くす私に店番の背の高い女性が迷 惑そうに顔を向けた。たしか、ここの店長のお姉さんだったか。それでやっと 私は我に返り、気を取り直してドアを通り抜けカウンターへと向かう。  と、会話になにやら聞き覚えのある新たな声が加わる。 「Is Ms. Rola familiar with the Irish fairy?」  振り向くと、そこにはなんでもないように参加しているクラスメイトの健一 郎の姿。私は愕然として後じさる。 「ち、ちがう。水島じゃない」 「は?」  そこでやっと私の存在に気付いた前野氏と健一郎、ついでに異国の少女がこ ちらに顔を向ける。 「こんなの、異人館だーっ!!」  そして沈黙。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」  沈黙が、重い。針のように冷たく鋭い視線は当然の如く私に集中していた。 「うわ〜ん」  そして、何かに耐え切れなくなった私は外へと飛び出していた。 「なんだね?」 「さぁ? 大方、例の如く変な事考えてたんですやろ」 # とりあえず一つ目、半ばこじつけっぽい。 # 英会話の不自然さは、私の英語力の無さに免じて許してやってください。 ろ ろくな男じゃありません -------------------------- 「――――」  急に巻き上がった風に気を取られて、六兎結夜はその決定的な一言を聞き逃 していた。 「えっ……」  白磁のように透き通った頬を赤く染めて、銀色の髪の少女が潤んだ瞳でこち らを見つめている。結夜はそれを、素直に綺麗だと思った。 「だから、連れて行ってよ。ネヴァーランドへ、貴方にはそれが出来るんでしょ う?」  不意に、強烈な既視感が結夜を襲う。交錯する藍と金の瞳。銀色の月。闇色 の森に揺らめく、無数の松明の光。血に濡れた短剣、約束、冷たくなって良く 彼女の身体。 (君はどっちを選ぶのかね?)  知らない声が耳の奥で再生される。 (お父様。私も、いっしょに連れて行ってください) (主よ貴方は決断をしなくてはいけない。すべてはあの、月も出ぬ深い夜の日 より定められていた事) (我の口出すべき所ではない。が、君自信彼女と共に歩みたいと考えているの では無いのかね?) (それでも、私は……) (約束、人と共に、共に……) 「……っ!?」  刺すような鋭い頭痛が 意識を表層へと引き上げる。ああ。結夜は溜息をつ く。答えなど初めから決まっていたのだ。私はそう在ると決断した。幾重の時 が流れても、それは変わらないのだ。 「連れては、行けない」 「どうして!?」  半ば悲鳴のようにして彼女は叫んだ。ああ、泣かないでいとおしい娘よ。決 断が揺らぎそうになる。 「人として生きていくんだ。私には貴方を連れて行っても責任が取れない」 「そんなもの、取ってもらわなくっても構わない!」 「私が構うんだよ。そう、これは単なる我侭に過ぎない。でも、私が関与する 事で訪れる不幸を考えると、私には貴方を連れて行くことは出来ない。もしか したら、ただ臆病なだけかもしれない」  彼女が泣いている。私も、涙を流していた。同時に、頭のどこか冷静な部分 で自らを糾弾する。勝手な男だ。泣いてしまえば、彼女は私を責めることが出 来なくなろう。だから私は、闇の中でこの涙に気付かれぬよう、必死で冷静な 声色を装う。 「卑怯者、貴方は逃げているだけだわ」 「返す、言葉も無い」 「私にどうしろって言うのよ。だって、私、あなたのこと……」 「それ以上は言わないで」  結夜は、彼女の唇に軽く手をあてがい、言葉を押し留めさせる。我ながら残 酷な事だ。自嘲する。  月の光にきらきらと光る藍色の瞳。どんな宝石よりも美しい大粒の涙が頬を 伝っている。ぐっと、抱き締めたいという衝動が湧き上がる。だが、それこそ 結夜には許されない事だった。 「さようなら。貴方に会えて、良かった」  黒い影の吸血鬼はそれだけ言い残すと暗い夜空に飛び上がる。少女が顔を上 げたときには既に闇の奥へと消えていた。 「酷い人……」  涙はまだ枯れない。悲しみはまだ失せない。だが、そんなものでうじうじと、 いつまでも悩んでいる事は、少女のプライドが許さない。 「絶対に、追いかけてやる」  銀色の月の許で、少女は虚空に向けて誓いを呟く。その越えは風に溶け、誰 の耳に届く事も無かった。 # めずらしくシリアス。 # 実はこれ、『窓に降る塵の雪(仮題)』のラストシーンだけです。書きあがり # そうに無いし勿体無いので転用。 # え? 万一書きあがったらどうするかって? 何食わぬ顔でこれもちゃんと # 引っ付けとくさ〜。 は パラボラアンテナ危機一髪 ----------------------------  黒いはずの男が、今日は白かった。  驚愕、困惑、周囲の反応を他所に、白ずくめで白いマントまで羽織った六兎 結夜は、優雅にお茶を飲みながら文庫本を呼んでいた。 「ありえへんし、黒くない六兎さん」  まず、女子高生が言った。 「旦那の病気が移ったんじゃない?」  次に猫耳メイドが発言する。 「どういう事だね」  MIBは憮然とした。 「っていうか、何で誰も頭に乗ってるパラボラアンテナにつっこまへんねん」  関西弁はここぞとばかりにつっこんだ。  そう、パラボラアンテナだ。  あの「いかにも電波出してますよ〜」と言った風情のある実は電波受信装置 が頭の上にどでんと乗っかっていた。そのパラボラアンテナを頭に乗っけて移 動している様は、控えめに言ってもメーザー殺獣光線車のようである。 「だって、六兎さんやし」  三人の気持ちを一言に纏め上げて代弁したのは、女子高生こと藤咲千緒だっ た。 「まぁ、何となくそれだけで納得してまいそうになるんは、よう分かるけど。 なんであんなもんつけてるんやろ」  関西弁こと十条健一郎は大きく溜息をつく。 「本人に聞けば良いだろう」 「いや、あんなんお近付きになりたく無いし」 「あたしはほとんど喋った事もないし。旦那が聞いて来たら?」 「嫌だ」  そうなると、自然に視線は健一郎に集中する。当然の事だが健一郎は首を振っ た。 「俺も御免やわ」 「クラスメイトやん」 「クラスメイトでも」  そうして、一同再び結夜を見る。 「どうせ、例の如くツッコミ待ちなんと違います?」 「あれ、もしかしてスカラー波とかのつもりちゃうか? 白いし」 「あれは電柱とかから出てるんじゃなかったっけ? パラボラアンテナ関係な いし」 「何となくもう出遅れた感じですしね」 「時事ネタは風化が早いからね」  結局その日。結夜は誰からもツッコミの来ないまま、お茶代を払って帰った そうな。  めでたしめでたし。 # 何故か煌が混ざってます。前野さんのお供か。 に 二枚目と三枚目 ------------------  誰も知らないことだったが、高く育った薄に埋もれて、そこには陰の気の溜 まる古い井戸があった。井戸の底には女がいて、女は毎夜皿の数を数えていた。 「いちまあ〜い」  怨念に満ちた暗い声が、ただ闇の中に響く。永い、永い間、女はずっとその 声だけを聞いて存在してきた。そして、これからもそのように在り続けるのだ ろう。 「にまあ〜い」  と、数えた時、一枚の紙がひらりと舞い落ちた。女は訝しげに眉をひそめる。 こんな事は初めてだった。何か不吉な予感がした。地に落ちた紙を手に取る。 湿気を含んで、少しにじんだ文字。おそらく水性のマジックによるものだろう。 ただ一言「ごめんなさい」と書かれていた。 「…………」  手に取った皿をよくよく見てみる。それは、何故か紙で出来ていた。  話は数時間前にさかのぼる。  その場所で、二人の男が対峙していた。その両方が黒い影のようなマントを 羽織り、片方は疲労困憊といった風に荒い息をついている。 「残念であったな。愚かなる同胞」  息を乱していない方の影が言った。 「身の程も弁えず、高貴なる闇の者を狩ろうとした教訓をくれてやる」  追い詰められた方の影、結夜は答えない。なぜか口元ににやにやとした笑み を浮かべ、真っ直ぐに狩猟者の瞳を見つめている。 「何がおかしい、子兎」 「いや、別に」  興奮した心を落ち着けるときのように、深く息を吐く。 「ただ、人間どうしようもない時には笑うしかないってことを実践してるだけ」 「遺言としてはお粗末なものだったな」 「いや、遺言にするつもりも無いのだけどな」  戯言を。と、笑い捨てる。刹那、黒い爪が結夜に止めを刺さんと薙ぎ払われ る。二つの影は、一様に塵と化して消える様を思い浮かべた。 「なに!?」  だが、狩猟者の爪は危ういところで宙を裂くだけに留まる。 「……っ!?」  一方、間一髪窮地を逃れた結夜自身も驚愕に目を見開いていた。一言も声を 発さずにいれた事については賞賛すべきであろう。突然に地面が抜け、十メー トル近くの距離を落下したのだ。一瞬、自らの状況がつかめなかった。  当人ですらそうなのだから、追い詰めていた方もそう素早く気付けるはずも ない。 「ぬぅ、どこへ行きおった小僧!」  ぐるりと辺りを見回すが、当然の事ながら見付かるはずもない。思えば、こ の時男はかなり焦っていたのだろう。気配を殺して背後に近付く一つの影に、 気付く事はない。  唐突に、胸に白い手が生えた。 「ぐぅっ」 「注意力散漫よ、小父様?」  背後で涼やかな女の声がする。 「貴様、な……ぜ……」 「私たちが、貴方のようなのをあんなぺーぺーの三下だけに任せると思う?」 「ぐ……」  男は何か言おうと口を開くが、それは言葉になる前に塵となって崩れ落ちる。 女はパンパンと手を叩き、塵を払うと辺りをぐるりと見渡した。 「で、金眼。あんたどんな小細工であれ避けたの? っていうか、何処?」 「ここですよ、烏先輩」  声は地面から聞こえた。深い草を掻き分けて、そこを見てみる。すると、地 面には何故か大穴が空いており、その奥で手を振る尻餅をついた後輩の姿。 「なにしてんの?」 「落ちました。なんか、古井戸みたいですね。ここ」 「……忍法、土遁の術」 「莫迦な事言ってないでさっさと引き上げてくださいよ〜」 「甘えんじゃない。自分で上がってきなさい」 「え〜〜」  ぶつくさ文句を呟きながら、結夜は何とか飛び上がろうと、立ち上がる。ガ シャンと嫌な音がした。 「え?」  恐る恐る、音の出所を探る。足が何か白いものを踏みつけている。それは、 積み上げられていた所を崩れたのだろうと思える数枚の皿だった。二枚ほど割 れている。それはもう容赦なく。 「げ……」  結夜は途方に暮れた。  調べてみると、二枚目と三枚目の皿が使い捨ての紙皿に掏り替えられていた。 つまり、皿が二枚足りない。最初から一枚足りないので合計三枚足りない。そ うすると、キチンと皿の数を数える事が出来ない。女は、その瞬間存在意義を 失った。  ふつふつと、怒りがこみ上げてくる。自分が何をした。ただ夜中に皿の数を 数えて悦に浸っていただけではないか。そのささやかな幸せを奪った者が許せ ない。 「こ、この怨み晴らさで置くべきかぁ〜」  誰も知らない井戸の中で、女は未だかつて無い怨念を込めて、復讐を誓うの だった。 # 何となくノリだけで作った短編。続きは考えてません。 # この井戸の人、お菊さんというより、そのイメージに依って具現化した陰の # 気の塊みたいな存在です。歪んだ井戸の精。気が向いたら再登場させようか。 ほ ほう、それが正体か ---------------------- 「うっ、くっくっく、正体現したらこんな感じで」 「ひゃははははは、傑作や」  その日、IC水島では盛大な笑いが巻き起こっていた。 「やはり角は角刈りを阻害するから付けんとこ」  そうやって消しゴムを動かす結夜の目じりには涙が浮かんでいる。少し大き めの画用紙に書かれた角刈りグラサン黒服のあの人。いや、触手やら鱗やら車 輪やらが付け足され、もはや『なんだかよくわからないもの』と成り果てた絵 から角を消していく。 「そうや、羽もつけたれ」  にやにやと細い笑みを浮かべた今風のあんちゃんが横から羽を書き足す。も ちろん、悪魔が背中につける大きめの蝙蝠の形をしたあれだ。ついでに先のと がった尻尾もつける。『なんだかよくわからないもの』が『もっとなんだかよ くわからないもの』へと変化していく。 「でも、羽は本人喜んでつけそうやね。『デッビィィィィィィルっ!!』とか言っ て」 「ああ、わかるかわる。でも、人に見せんの恥ずかしいから自室で鏡見てこっ そり練習するんやで」 「そして満足できる時点でさりげなく見せびらかす」 「けっけっけ、前野あれで結構内気やからなぁ」  けたけたと、今度は大口径ビーム発射口を書き加えているところで、背筋を 凍りつかせる冷たい声が背後から聞こえた。 「ほう、それが私の正体かね」  果てしなく嫌な予感。というか、コレはもうダメだという確信が脳を直撃し た。 「は、ははは」  口から浮ついた笑い声が漏れる。ゆっくりと振り返る。そこには、角刈りグ ラサン黒服のあの人がひどく楽しげな様子で立っていた。 「いや、これはその、ね……ええと、ねぇ鐘継サン」  隣にいたはずの人物に目を向ける。驚くべき事にそこには誰もいなかった。 はっとして外を振り返ると、すたこらさっさと逃げる共犯者、比企鐘継の後姿。 「うわあっ、裏切り者っ!!」 「大丈夫だ」  角刈りグラサン黒服のあの人はひどくゆっくりとうなずいて、言い放つ。 「鐘継くんにも後でちゃんと話をしておくから」  にっこり笑うその顔の前には、結夜など蛇ににらまれた蛙に等しかった。 「ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ――――――」  その日、結夜の身に降りかかった悪夢のような所業について、語られる機会 は無いだろう。たぶん。  合掌…… # 何の縁か、鐘やんといっしょにいます。 # 前野さんを肴にして大笑い。当然、罰が当たりまして…… へ 変人は誰だ -------------- 「この中に変人が一人いる!」 「おまえやろ」  突然文庫本を閉じて立ち上がった結夜に、健一郎はにべもなくツッコミを入 れた。 「ぐむ、何を根拠に」 「日頃の言動」  一言ですんでしまう辺り、かなり説得力があった。反論を考えて、あ―うー などとうめいても見るが、思いつかない。結局、がくりと肩を落として文庫本 に視線を戻した。  そして、数分。 「変人の何が悪い!?」 「全部。邪魔やし」  また唐突に叫びだした結夜を迷惑そうに一瞥しそう言うと、健一郎は再びパ ソコンに向かってキーボードを叩き続ける。 「邪魔って何の?」 「何って、人生の?」 「うわ、痛あっ」  あまりといえばあまりの言い草に、結夜は机に倒れ付した。 「そんな事ないぞー。変人だって、役に立つ時があるに決まってるさー」 「例えば?」 「ええと……ジェット機の機内アナウンスで『お客様のどなたかに変人の方は おられませんか?』とかいうのがかかったやら」 「どんな状況やねん、それ」  呆れた口調で健一郎は溜息をついた。そう言われると、結夜もどんな状況下 考えざるを得ない。変人の必要な状況。つまり、変人の活躍する分野で困った 事が起きたということだ。変人の活躍、果たしてそんなものは思いつかなかっ た。それなら発想を変えてみよう。活躍する変人とはいかなるものだろう……  活躍する変人。ザ・変人ヒーロー。唐突に、変人の代表格ともいえる、変態 ヒーロー(?)の姿が脳裏に閃いた。 (フオオオオオオオオ) (それは私のおいなりさんだ)  …………変態仮面が。 「ごめん、やっぱ変人の地位は健一郎に譲る」 「いらんわい!」 # 作業中のようでそっけない健一郎くんでした。 と 取り返しのつかない失態 -------------------------- 14:23:29 *** RG-Leana has joined to #吹利 [RG-Leana] はろ〜 [shiva] はろ [RG-Leana] シヴァの女王だ。はろ〜 [shiva] 誰が女王じゃ(げしげし [RG-Leana] あう〜 [ft] おかえり〜 [RG-Leana] じつはただいまでもない罠 [RG-Leana] 風邪のようなものを引きまして、今日はおやすみでした [ft] ふむふむ、それはお大事に [RG-Leana] 文化祭の準備で忙しかったからな〜、ここんとこ [ft] まぁ、あんまし根詰めすぎないように [RG-Leana] 実は昼間寝てだいぶ楽だったりする〜。やろうと思えば空だって 飛べますさー [ft] (^^; 15:29:18 *** RG-Malena has joined to #吹利 [RG-Malena] にゃー [ft] にゃー [RG-Leana] にゅ〜 [shiva] にょ〜 [RG-Malena] ありゃ、兄者がいる [RG-Malena] がっこーは? [RG-Leana] かぜっぽいので休み〜 [RG-Malena] はぁ、それはそれはご愁傷様 [RG-Leana] まぁ、風邪を口実に一日休めるし〜 [ft] (^^; [RG-Malena] いや、今日文化祭でしょ [RG-Leana] はあっ Σ( ̄□ ̄; !? [shiva] 忘れてたのか……(^^; [RG-Malena] あほやー [RG-Leana] ぐはあ……_| ̄|○||| 20:19:43 *** Maia has joined to #吹利 [Maia] こんばんわ [GM_Mk-2] ばんわ〜 [kane2gu] こんばんわー [RG-Away] ああ、まいあせんせ〜だ 20:23:06 *** RG-Away is now known as RG-Leana [Maia] はい? [RG-Leana] 文化祭忘れてた〜(核爆死 [kane2gu] うわっ、マジっすか? [Maia] それは…… [RG-Leana] クラス劇どんな様子でした? [Maia] ちゃんと滞りなく出来てましたよ。 [RG-Leana] はふん、そりゃまあ良かったというか、複雑 [kane2gu] ちなみに、なんの役だったんですか? [RG-Leana] いや、脚本係だったから舞台には出ないんだけどね〜(げふげふ [RG-Leana] うう、そろそろ寝まふ〜 [Maia] はい〜 [kane2gu] おやすみ〜 20:35:33 *** RG-Leana has left IRC(うう、一生の不覚……) [RG-Malena] 週に何回一生の不覚やってるんやろ〜 [Maia] (^^;) # と、いうわけで趣向を変えてみる。いろんな人借りました〜 # RG-Malenaは宵姫のNickです。はい ち ちらちらと瞬くひかり ------------------------ 「ううむ、どうしたものか」  手に持った藍色の宝石を弄びながら、結夜は途方にくれていた。  そう、問題はその手に持った宝石である。十数分ほど前、どこか怯えた雰囲 気の依頼者の男に押し付けられた、遠目にはただの硝子玉としか見えないよう なそれ。間近で見ると、素人目にもものすごい価値のある石であるとわかる、 禍々しい念の篭った石。 (これは、死者の遺品です)  あの男の声が耳に蘇ってくる。 (近くで船の沈んだ数日後に浜に流れ着いた物で、あまりに綺麗だったから、 祖母がもって帰ってきてしまっったんです)  祟りがあるといけないから、どうにか処分してほしいという事だった。  簡単なくせに、深入りは危険な依頼。理性は、そんな石など海にでも放り投 げて日常の生活へと戻っていけばよいと告げている。だが、なぜか手放せなかっ た。  と、突然視界に白い塊がにゅうと飛び込んでくる。 「うわぁっ」  いつの間にか近寄ってきていた巨大な白い犬が、藍色の石に頭を近づけて臭 いをかいでいる。首輪が無いところを見ると、野良だろう。だが、それにして は警戒心が薄いような気もする。 「こらこら、これはあかんって」  あわてて犬の鼻の届かないところまで手を上げる。すると犬は不満げにふす んと鼻を鳴らした。なにか人間臭い犬だな。そんな事を思いながら、宝石に視 線を戻す。  ちらりと光が瞬いた。なんだろう。疑問符が沸く。初めは太陽の反射だと思っ た。しかし、よくよく見てみると明らかに違う。それは、宝石の中でちかちか と定期的に瞬いていたのだ。   さらに詳しく確かめようと顔を近づける。光の瞬いている部分は、影のよう に暗くなっていた。と、唐突に意識が遠のいていく。やばい、引きずり込まれ る。そう考える間もなく、視界が暗転した。  どこかから波の音が聞こえてきた。  目を開くと、目の前には暗黒があった。 「……っ!?」  声を上げようと口を開くと、その中に塩っ辛い海水がなだれ込んでくる。周 りの状況がつかめない。ただ寒く、体がだるく、息苦しかった。驚愕する。  息苦しい。吸血鬼となった今では呼吸をする必要も無いはずなのに、肺は必 死に酸素を要求していた。唖然として思わず、足の動きが止まる。すると、当 然のことながら沈みそうになる。そこでやっと、結夜は自分が荒れ狂う海の中 にいて、必死で立ち泳ぎをしていたと言う事に気付いた。  辺りを見回すと、偶然同じように波間を漂っている人間と目が合った。苦し いよ。助けて、死にたくない。嘆き声が聞こえるようで、思わず反射的に目を そむける。ふと、目の端に光が瞬いた。あの光だ。  ああ、あれは陸地だ。灯台だ。誰かの声が聞こえた気がした。手の届きそう なところにその光はある。だが、絶対にそこにたどり着く事は出来ない。誰も がそれを理解した。このまま自分達は、海の底へと沈んで死ぬのだ。その瞬間、 体が急に沈んだ。慌ててもがいても一向に浮き上がる事が出来ない。口の中に 海水が浸入する。嫌だ、嫌だ、死にたくない…… 「おんっ」  突然、犬の鳴き声が聞こえて、気がつくと黒い空間に立っていた。辺りを見 回す。さっきの白犬がすぐ脇に座っていた。 「今の鳴き声、君が?」  念のためにたずねてみると、犬はゆっくりとした動作で肯いた。軽く礼の言 葉を口にして、もう一度辺りを見回す。どこまで言っても真っ黒な空間。だが、 暗いわけではないようだ。その証拠に、隣に座っている白い犬の姿ははっきり と見える。 「お兄ちゃんは死なないの?」  声が聞こえたのは後ろからだった。慌てて振り向く。和服を着た、十歳前後 の幼子がそこに立っていた。 「生憎と、丈夫なだけが取り柄でね」  と、言っても犬の助けが無かったらおそらく今頃は水の底だったろう。とり あえず、虚勢を張って不敵な笑みを浮かべる。たぶん、ただのにやにや笑いに しか見えないだろうが。 「そう、よかった」  そう言って、少女は無邪気に微笑んだ。その反応に、結夜は軽く目を見張る。 てっきり、この少女が原因だと思ったのだが、どうやら違ったようだ。 「きみは?」 「私はとうだい」 「とうだい?」 「うん、灯りで照らすの」  にっこりと笑って、少女は片手を上げた。指が、ある一つの方向を向く。 「どうしたの?」 「出口、あっち」  少女の指差した方向には、ちかちかと光が瞬いていた。宝石の中に見たもの と同じ、波間から見えたものと同じ、灯台の光。  唐突に、結夜は悟った。石の中心に宿っていたのは溺死者の霊ではなかった。 彼女は、それを手の届くような近いところから見つめていて、助ける事の出来 なかった灯台の無念だ。決して届く事の無い手。伸ばしていたのは死者だけで はない。それを見つめる物もまた…… 「おにいちゃん、行かないの?」  気がつくと、少女が不安げに結夜の顔を覗き込んでいる。白犬は、すでに光 に向かって歩き始めていた。結夜は少女を安心させようと笑みを浮かべる。 「いや、行くよ」  光に向けて歩き出す。ちかちかと瞬く光は、どこか誇らしげだった。結夜は 忘れていた事を思い出し、一度だけ少女を振り返った。 「ありがとう」  導いてくれてありがとう。手をさし伸ばす事が出来なくても、私たちはいつ も貴方に感謝しています。 「ん……」  少女ははにかむように微笑んだ。  目が覚めると、もとの公園のベンチだった。日の角度はほとんど変わってい ない。恐らく、眠っていたのは一瞬だったのだろう。  白犬は既に背を向けて去っているところだった。軽く手を振って別れを告げ る。彼が気付いたかは知らないが、また会うこともあるだろう。御礼はその時 に、ビーフジャーキーでも持ってくることにしよう。  ふと手元を見る。藍色の宝石がぱしゃんとはじけて水になった。浄化された から、石として存在する力もなくなったのだろう。少し寂しい気もしたが、そ れが彼女の望んだ事なのだ。  なんとなく清々しい気分で、結夜は立ち上がる。時間もあるし、軽い依頼を 一つこなしたから懐に余裕も出来た。IC水島に行って、今日は紅茶でも飲もう。  そうして、結夜はまた彼の日常へと戻っていく。 # またシリアスですね〜 # シリアスで、一人だと微妙に性格変わります。いつも道化てる反動ですかね。 # そして、一人称だか三人称だかよく分からない書き方になってしまった。 # 臨場感が出ないよ。ぐう # 今回は白雲さん借りました〜。いえ〜 # 次は誰出すかな〜 り 理由はたったひとつだけ -------------------------- 「取りあえず、理由を聞こうか」  抑揚の無い淡々とした口調で、背後から声がかけられる。結夜はびくりと身 を震わせ、手にしていた箸を取り落とした。 「え〜つと……」  振り向けばそこにはトイレから戻ってきた麻依子がにこりと笑って立ってい る。ただし、目だけはキッパリと笑っておらず、結夜がもさもさとつまみ食い をしていた、彼女の昼ごはんに視線を向けている。必死で言い訳を考える。だ が、この状況を上手く誤魔化しうる言い訳などそう都合良く出てくるはずも無 く、正直に告白する事にした。 「いや、おいしそうだったから」  その途端、麻依子から立ちのぼる殺気が一気に数倍にも膨れ上がる。ねっと りとしたあぶら汗がだらだらと流れてくる。背筋にはびっしりと鳥肌が立って いた。 「そう」  静かに、麻依子が近付いてくる。慌てて後じさり、すぐ後ろが壁である事に 気がついて愕然とする。退路は無い。これは、結夜に残された道はひとつしか ないという事だ。つまり、謝れば許してくれるかもしれない。 「ご、ごめんなさい」 「ううん、別に気にしてないって。育ち盛りだしね」  言葉とは裏腹に、麻依子は手元にあった椅子をぐわしと掴み、そのまま持ち 上げる。やはり許してくれないようだ。結夜は、終わりを覚悟した。  と、突然横から太い手が伸びて、麻依子を止める。 「店の椅子を勝手に投げんな」  後になって結夜は語る。いつもはヤクザの一種にしか見えない朱の姿が、こ のときは神に見えた。と…… 「せめてこれにしとけ」 「おう、気が利くねえ」  そう言って、麻依子は朱から数本の果物ナイフを受け取る。結夜はただでさ え白い顔が、それこそ紙のように真白になっていくのを感じた。  神は神でも、暗黒神とかの方だったのだ。 「いやあ、悪いねえゆうくん。催促しちゃったみたいで」 「催促というより、ありゃほとんどカツアゲですがな姐さん」  新しく注文した昼ごはんを前に、麻依子は上機嫌に鼻歌を歌っていた。隣で は、むすっとした表情の結夜が、何故か全身をぼろぼろにして座っている。 「っていうか、なんか最初に頼んでたのよか五割増くらい豪華になってる気が するんですけど」 「んん、細かい事は気にしな〜い」  言うが早いか、さっさと貪り始める。その様子をため息混じりに眺めている と、いつの間にか横に朱が立っていた。 「ほらよ」  と言って、渡されたのは請求書だった。昼飯代千五百円+果物ナイフ七百円 ×五、しめて五千円なり。 「って、ナイフの弁償私がするのデスカっ!?」 「あたりまえだ。あいつはそんな金持ってねぇからな」  と、幸せそうにいつもよりかなり豪華な昼食を平らげる麻依子を親指で指差 す朱。たしかに、その通りである。  泣きながら虎の子の五千円札を差し出し、ずいぶんと軽くなった財布を覗き 込みながら、生涯二度とつまみ食いはするまいぞ。と、心に誓う結夜であった。 # 麻依子さん借りました。台詞とか微妙に自信ない。 # っていうか、麻依子さんトイレとか行くのかな。ゾンビだけど。 ぬ ぬしは逃げた ---------------- 「予は、この淵の主であるぞ」  胸を張って宣言する、緑色の皮膚をした全身いぼだらけのひょろりとした大 男に、結夜は「はぁ」と気のない相槌を打った。 「ちなみに、主であるから分類するとたぶん神様の一種であるぞよ?」  その反応が気に入らなかったのか、自称淵の主はさらに己を誇示する。とり あえず、何か言わない事には話が進みそうに無いので、結夜はおそらく淵の主 が望んでいるであろう反応を返してみた。 「『うわ〜、すごい。神様なんて、へへ〜参りましたでげす』」 「なんか癪に障るなぁ」  それでも不満気な淵の主に、結夜は冷たく言い放った。 「っていうか、見た目に説得力ないし」 「うわっ、きっつ〜。予の硝子細工のように脆く儚い心は結構傷付いたぞよ」 「いっそ砕けてしまえ、そんなもん」  面倒くさそうに手を振る。というか、実際に面倒くさいのだろう。淵の主は 不満気に顔をしかめ、なおも食い下がる。 「いや、予だって昔はもっと神様らしかったんだって」 「へ〜」 「あっ、信じてないな。これがその頃の写真ぞよ」  と言って、一枚の大判写真を取り出す。何となくお見合い写真みたいだなあ と思いながら結夜がそれを覗き込むと、そこには神々しいまでに麗しい白皙の 美青年が甘い笑顔を浮かべて優雅に立っていた。  何処をどう見ても、目の前にある『緑色の』とは結びつかない。疑わしい目 付きでそれを見ていると、自称でも神である、それに気付いて口を出してきた。 「あっ、信じてないな」 「そりゃあ、ねぇ?」  すっぽんが実は月でしたと言っている様なものだ。 「っていうか、なんでそんな姿になったのですかね?」  至極最もな疑問を結夜は口にした。 「いや、周りを見ればわかるであろう」  ぐるりと周りを見渡す。そこには、不法投棄のゴミの山。ゴミ袋から染み出 てきた謎液体で淵は濁り、鼻の曲がるような汚臭を漂わせている。淵と言うよ りかは沼と言った方がそれらしい。まぁ、確かにこれでは外見があんな事になっ ても仕方ないかもしれない。 「ここ数年、人間どもが捨てていった物である。これのせいで、淵に住んでい た物はみんな死んでしまって霊格もずいぶん落ちてしまってのぅ」 「いや、祟れよ」 「下手な事したら水道局とか零課に追いまわされるし。全く、不便な世の中に なった物ぞよ」  軽い口調で愚痴を漏らす淵の主の姿は、どこか哀しげだった。結夜は言うべ き言葉を捜すが、何も出てこない。どちらかと言えば廃棄する方に属する自分 が、軽く慰めれるような事でも無いのかもしれない。  気まずい沈黙に耐えかねて、恐らく最初に口にすべきだった物であろう本題 に入る事にした。 「で、何の用があって私を呼んだのですか?」 「おお、そうであった」  淵の主は酷く人間臭い仕草でぽんと手を打った。 「いや、実は淵もこんな状態であるし、数百年の間淵の主をしていて、十分な 徳も溜まった。良い機会ゆえ昇竜して天に昇ろうかと思うたのである」 「……は?」 「で、代わりに淵の主を勤めれるような力の強い物を探していたところ、丁度 そなたが近くを通りかかったので来てもらったのだ。少々水の気が少ない気も するが、なに、そんな物しばらく主を務めていれば自然にどうにかなる」  あまりにも身勝手な物言い。結夜は後ずさりながら丁寧に断わりの言葉を発 した。 「謹んでお断り申し上げます」 「いや、無理」 「なぬっ!?」  急に、足を引っ張られるような感覚。慌てて見てみると、太い霊的な綱が足 と淵とをしっかりと繋いでいる 「さっき話している間に場に縛り付けて置いたから」 「うわっ、酷っ」  腐っても淵の主と言う事か。全く気がつかなかった。 「それでは、達者でな若いの」 「って、すがすがしい顔で逃げるなっ!」  凄まじい光が沼の主から迸る。結夜は思わす一瞬目をつぶった。次に目を見 開いた時、沼の主は金色に輝く竜と化して天へと昇っている所だった。 「ひきょーもん! かいしょーなし! 降りてこーいっ!!」  大声で叫べど、そんな事で降りてくるはずもなく。  結局結夜は、三日後にSRAの同僚に発見されるまで淵に縛り付けられていた ままであったと言う。 # 一日遅れてしまった。 # 結夜くん、ついに神になっちゃいました。今普通に生活していると言う事は、 # まぁ何とかなったんでしょう る ルパートさん出番です ------------------------  コンクリートで塗り固められた薄暗い部屋。光を取り込む窓は北側に一つし かなく、天井からぶら下がった電球の光もどこか弱々しい。隅っこの暗がりに、 その男は座っていた。  皮のズボンにラフなジャンバー。男の癖に唇を塗り、髪の色は脱色した金髪 だ。顔色が白いのは決して化粧だけの所為ではない、どこか生気の無い男であっ た。  きぃと、木製の扉が開く。  中に入ってきたのは黒いマントにサングラスをかけた少年、結夜である。し かし、暗がりに座り込んだ男はそちらには目も向けず、独り言でも呟くように ぼそりと言葉を発する。 「出番か」 「はい」  結夜は頷いて答えた。 「ルパートさん、出番です」 「そうか……」  感慨を噛みしめるように、男は低く呟く。その瞳は、どこか遠くを見つめて いるようであり、すぐ目の前を見据えているようでもある。結夜には判別がつ かない。 「アンジュは?」 「先に舞台でお待ちしています」 「そうか、そうか」  何かを確かめるように二度繰り返して、男は短く溜息を吐いた 「ここまで来たんだなぁ」  そこに込められた感情は、懐古であり、喜びであり、哀しみであり、いろい ろな物が混ざった物だった。だが、あえて一言で言い表すとこうなる。そこに 込められた物は感動であった。 「十年、長かった十年だよ。俺とアンジュが一緒に走り出してもうそれだけに なる」  男が顔を上げた。夢見ているような表情で、とくとくと語る。 「色々あったよ。思えばつらい事ばっかりだった。アンジュには苦労しかかけ なかったな。どうしようもなくて泣いた事だってあった。だが、それすらも、 今日で楽しかった思い出になるんだ。楽しかった……」  満足げな微笑を口元に浮かべ、そのまま瞳を閉じる。母親の胸の中で眠って いるような、安らかな表情。静かな沈黙が闇を満たした。 「ルパートさん、出番です」  結夜は、もう一度男に向けて言い放った。 「ん、わかった」  ルパートは立ち上がり、扉に向かって歩みだす。ノブに手をかけ、ふと何か を思い出したように後ろを振り向く。 「ありがとう」  扉を開くと、光が広がっていた。ファンの歓声が舞台を飲み込む。既にそこ に立っていたアンジュがこちらに手を伸ばした。それに応えて、ルパートも手 を差し伸べる……  無人の舞台に立って客席を見渡す。がらんどうとした空間。寂しさ以外に何 もない、泣きたくなるような哀しい空間。  アンジュとルパート。絶頂を目前として世を去った二人。薄野杏子と高見沢 春斗は既にこの場所から消えていた。 「名を残す事なく散った、天才シンガーとギタリスト。か」  ようするに、そういう仕事だった。交通事故で死んだミュージシャンが、夜 な夜なコンサートホールに現われる。除霊をしてくれ。よくある、なんでもな い簡単な仕事。だったはずだ。 「なんか、やりきれない」  耳に、ルパートの声が残っている。「ありがとう」あれはただ、呼びに来て くれた少年に対する簡単な労いだったのだろう。たったそれだけの事。しかし、 結夜の耳にはそうは届かなかった。 「あっ……」  熱いものが目頭から溢れてくる。反射的に上を向く。それでも、瞳から一筋 の涙の粒がこぼれ落ちる。 「参ったな」  おもわず苦笑がこぼれる。このまま、帰るわけにはいけないな。空虚な舞台 の上で、しばしの間結夜は何をすることも無く立ち尽くした。涙が、止まるま での間。 # なぜか「ルパートさん」でシリアスです。感動が安っぽい気もします。 # 杏子(あんず)でアンジュはともかく、春斗(はると)でルパートは少々無理が # あったかも知れないとか、思わなくもありません。 を ヲトメゴコロ ---------------- 「はぁ、乙女心かぁ」  無道邸の客間でお菓子をつまんでいる時であった。図々しくも昼飯を便乗さ せてもらった結夜は、顔の部分に鉄仮面のような物をつけた怪しげな黒猫と戯 れながら、溜息を吐いて呟いた。 「のう、前野えもん。乙女心とはいかなる物なのだろうか」 「いや、私に聞かれてもね」  苦笑しながらティーカップに紅茶を注ぐ前野えもん。もとい、前野浩。 「突然どうかしたのかね?」  当然の疑問を口にする。無理も無い。目の前にいるのは、いろんな意味でヲ トメゴコロなどと言う物とは生涯を通して関わりの無さそうな六兎結夜である。 「いや、ちょっと妹がね」  苦々しげに語り始める。 「宵姫くんか?」 「アレじゃなくて本物の方」  一応、周囲に対して宵姫は『始祖であり、咎人たるカインの名にかけて、義 兄弟の契りを交わした仲』であると説明してある。本当の所は全く違う訳だが、 IRC にやって来た宵姫について紹介する際、そういうでたらめを並べたのが定 着したのだ。わざわざ、言うまいとしている事について深く詮索しようという 人間はいなかった訳である。  怪訝そうに眉をしかめている前野に、結夜はなにか言い訳するように手を振っ て事情を説明した。 「いやね、妹が部屋に勝手に入るなというのですよ」 「ほう、妹さんはいくつ?」 「ちょうど、宗谷君と同じ歳だね」 「ふむ、まぁそういう年頃なんだろう。みかんも最近はノックせずに部屋に入 ると怒るし」 「いや、それだけなら良いんだけどね」  結夜はさらに深い溜息を吐く。 「私の本を勝手に自分の部屋に持ち込んだ挙句、探しに行こうとしても駄目だ と言うのだ。で、勝手に友達に貸したり、無くして自分は知らないと言い張っ たり」 「それは、乙女心とか言う問題なのかね?」 「……多分違うかも」  熱い紅茶に角砂糖を二つほど沈める。一つ二つ掻き混ぜると、あっという間 に溶けて消えた。そのままだと猫舌の結夜には熱すぎるため、砂糖が溶けた後 も時折掻き混ぜて紅茶を冷ます。 「まぁ、頑張りたまえ」 「うう、頑張るわ」  温くなった紅茶は程よく甘かった。 # なんか他愛の無いショート。 # こういうのの方06らしい気はしますね わ 罠の数は35 ---------------- 「嫌よ、私は絶対に行かないからね!!」  喫茶店、 Silver Roseの扉を開いて、まず聞こえてきたのがその怒鳴り声だっ た。結夜は思わず首を竦める。  見ると、見慣れた二人の吸血鬼がカウンター越しに激しく言い争っていた。 というか、片方が一方的に噛み付いているのに近い。カウンターの向こうで苦 笑しているのが、朝霧桔梗こと《銀目》。険悪な表情でそれに捲くし立ててい るのが黒崎沙耶こと《烏》。どちらも SRA内では結夜の先輩に当たる(と言っ ても、結夜は SRA内で最も新参の吸血鬼であり、組織の中には先輩しかいない 訳だが)強力な吸血鬼だ。  触らぬ神に祟り無し。そんな事を考えながら、カウンターの端の席に腰をか ける。もっとも、横暴な神様である。祟ってくれる時はこっちがどれほど丁重 に扱おうとも祟ってくれる訳だが。  万一に備え、逃げる準備をしながら注意深く耳をそばだてる。なに、それほ ど警戒するなら店に入った途端回れ右をすれば良かっただって? 経験則的に 、それが逆効果であることを結夜は知っていた。こちらに気が向いていない時 に、逆に注意を引くような行動は止めておくに限る。 「そもそも、なんで私が行かなくちゃいけないの? 別に桔梗さんが行ったっ て良いじゃない。そう、それが良いわ」 「そういう訳には行かないよ沙耶ちゃん。先方のたっての希望だからね」  桔梗は相変わらず、何を考えているのだか分からないあいまいな笑みを浮か べ、沙耶を宥めすかす。しかし沙耶も、その程度で納得するような玉では無い。 「それって一種のセクハラよ。性差別だわ。女性社員だけが秘書やお茶汲みを 努めた忌まわしき時代は終わりを告げなくてはいけないのよ。吸血鬼にも、い え、永久に近い生命を持つ吸血鬼だからこそ、常に新しい風を取り込んでいか なくてはならないのよ」 「それはそうだけど。沙耶ちゃん? 問題を摩り替えようとしているね」 「うっ……とにかく、こういう簡単且つ面倒で嫌な仕事は結夜にでも押し付け とけば良いの」  ほら来た。内心の焦りを抑えつつ、冷静に逃亡を図る。予め足元に置いてお いた影に素早く身を沈ませ、そのまま店の外へと跳ぶ。簡単なはずの事だった。  だが、その目論見は恨めしくも失敗に終わる。影に身を隠した所で、突如と して引っ張り出されたのだ。より性格に表現すると、まるでトランポリンか何 かで飛び跳ねたかのように、影の中から跳び出してしまった。  何が起こったかわからず、慌ててバランスをとり床に着地する結夜の肩に、 ぽんと手の平が置かれる。振り向かなくても分かる。沙耶の手である。 「おや、先輩に話し振られた途端何処行くつもりだったのかなぁ、結夜ちゃん?」 「い、いや。ちょいとトイレに」 「嘘ついたら肋骨八本折るわよ」  無論、本気である。この先輩の言動に冗談を期待してはいけない。 「うう……っていうか、何したんですか先輩」 「気付かなかった? 貴方がこの店に入って来た時に結界を張っておいたのよ」  全然気付いていなかった。しかし、それも無理も無い事である。沙耶は SRA 内でも珍しい、生まれ持った吸血鬼の性質より、自らで磨いた魔術の腕で持っ て戦う吸血鬼である。もちろん、結夜よりは一枚も二枚も上手。出し抜こうな ど最初っから甘い考えだったのだ。 「って事は、私が来た時から既に押し付けるつもりだったんですね」 「あったり〜。都合のいいことに、結夜はまだあの人と会った事無いし、新人 としての挨拶もかねてって事で大義名分が出来る。良いでしょう、桔梗さん?」 「はぁ、仕方ありませんね」  溜息を吐いて首を振る桔梗。仕方なくあるもんかという結夜の主張は無論の 事ながら黙殺される。 「先方にはそう連絡しておきます」  やはり、何が何でも回れ右をして逃げるべきだったのだと、結夜は今さらな がら悟った。  という事で、結夜は十分後、古めかしい洋館の中で四苦八苦していた。  いや、洋館と言うより城。より正確に的を得た表現で言い表すなら、石造り の迷宮とでも言った方が正しいのかもしれない。端的に表すなら『ろくでもな い場所』である。  と、正面から青黒い肌をした小鬼が飛び出してくる。深く溜息を吐くと、結 夜はそれを軽く薙ぎ払う。小鬼は石壁に背を打ち付けて地に落ちると、じゅう と蒸発するような音を立てて闇に溶けた。  別に結夜が強いわけでは無い。相手が弱すぎるのである。先程から、弄るよ うに小物が飛び出してくる。結夜を本気で追い返すつもりが無いことは丸わか りであった。相手はSRAで定める所のランクAである大物吸血鬼なのだ。殺すつ もりなら結夜などもう千回は死んでいてもおかしくない。  参考までに解説しておくと、密度は低いとは言え世界に広がる SRA内に置い ても、 ランクAの吸血鬼とはそう多くいない、伝説級の怪物である。ちなみに、 朝霧桔梗のランクがC。黒崎沙耶のランクもC。結夜に至っては下から二番目で あるランクDに過ぎない。 「まったく、何を考えてんだか……」  そんな事をぼやきながら、結夜が何となくもっともらしい扉にたどり着いた のは、それから数体の雑魚を屠った後であった。  大仰に作られた樫の扉。所々になにやら悪魔らしいレリーフが施され、おそ らくこれだけを質屋に持っていってもそれなりの値がつくだろう。と言っても、 いくら扉を鑑賞していた所で埒があかない。結夜は大袈裟な扉に相応しくない 大雑把な動作で扉を蹴り開いた。 『良くぞここまで来たな、勇者よ。誉めてやろう』  何処からともなく声が響く。そこは、少し開けた円状の大広間だった。ぐる りと、数十もの扉が部屋を取り巻いており、真ん中に円いテーブルが置いてあ る。近くによってみると、机の上には数枚の、謎の記号が描かれたタイルが乗 っていた。 「っていうか、勇者と違うし」  所在のわからない声の主にツッコミを入れておく。 『ノリの悪いやっちゃな。まあいい、用件を聞こう』 「SRAの使いで、回覧板届けにきました」  手に持った板を上に挙げて、何処と知れぬ声の主に見せてみる。声の主は、 しばらく考えるように唸っていたが、やがて何を決めたのか、ふんと鼻を鳴ら した。 『宜しい。我に会いたくば、その部屋にある36の扉の内一つより繋がる我の部 屋まで来るよい。ただし、全ての扉のうち35は、恐るべき地獄へと通づる門で ある。ヒントはその辺りにある故、心して来るがよい』 「あっ、机の上においとくんで見といてくださいね」 『あっ、卑怯者! ふん、そんな事したって、我見ないもんね。ちゃんと部屋 まで来るように』  小学生か貴様は。そんな事を心中で思いつつ、結夜は諦めて机の上に置かれ た謎のタイルを見る。恐らく、ヒントと言うのはこのタイルの事だろう。数も、 数えてみると丁度36枚あった。このタイル一枚一枚が、全ての扉に対応してい るのか。様々な思考をめぐらして、黙考する。  そうして、十分後の事であった。何故沙耶があれほど行くのを嫌がったのか に気が付いたのは。  タイルにはこれと言って何の意味も無いという事に気が付いたのは。そして、 周囲にある36の扉のうち一つが、罠の無いはずの唯一の扉が、紛れも無く自分 が入ってきた広間への入り口であるという、馬鹿げた事実に気付いたのは。  結夜は無言で机を蹴倒す。とたんに、癪に障る大爆笑が広間に響いた。 # ちょっと尻切れ蜻蛉だったかな。 # オチだけやりたくて始めたのに、導入部分でダラダラとしてしまってこうな # りました。 か 枯れない花 -------------- 「ここに一つ、枯れない花がある」  店先にひっそりと飾ってある、組織の象徴とも言える銀色の薔薇を手にとっ て、男は静かに語り始めた。 「この花は美しく、時によって老い枯れる事もない。永遠に美しいまま咲き誇 る」  握り締めると、しゃんと澄んだ音を立てていとも簡単に砕ける。割れ飛んだ 破片は他ならぬ男自身の掌を傷つけ、緋い雫が腕を伝って木張の床へと滴り落 ちる。 「美しき張子の薔薇より、醜く枯れ散った野薔薇の方が、本当は尊いのではな いか。最近はそんなことばかり考えるよ」  店に沈んだ影達の中に応えを返す者はない。そう、誰もがそれを知っていた。 知っていながら、小さな希望にすがり付いて永い時を生きながらえる。かける 言葉など、他ならぬ彼ら自身が最も知りたがっていた。 「私は行く。もう、疲れた」  背を向け、外へと通ずる樫の扉を押す。誰もそれを止める事は出来ない。最 も若き者が、ただ一人後姿に声をかけた。 「それでも私達は生きていきます。未だ見知らぬ世界の中に、未だ見知らぬ何 かを求めて」  男は何も応えない。ただ、ふっと微笑ったような気がした。  扉に添えつけられた鐘が、からんからんと空虚な音を立てる。今度こそ、男 を呼び止めるものはいない。影達はただそれを、それぞれ複雑な気持ちで見送 る。  店の奥に添えられたピアノが、静かに葬送の曲を奏でていた。 # 一日置いたくせにこんなんです。 # 結夜は出て行ったほうじゃなくて、声をかけた若い方です。間違えないよう。 よ 夜を盗みにくる男 --------------------  その日、前野浩氏が妹のみかん嬢を伴ってIC水島に訪れると、何故かいつも 莫迦みたいに騒いでいる。というか、いつも騒いでる莫迦が珍しくも、ぐった りと疲れたように座りこけていた。 「どうかしたのかね、結夜くん」  その声に反応して、結夜はゆらりとした動作で前野のほうを振り返り、一言。 「今朝は海老反り状態で銃弾を躱していたな」 「は?」  突然何を言い出されたのか理解できず、前野は間の抜けた返事を返した。取 りあえず、己の身を振り返ってみる。今の所、マトリックスごっこを人前でやっ た覚えなどない。目の前に座っている黒マントの怪人の表情は、サングラスの 下に隠れて判別つきがたい。無駄だろうと思いながらも、取りあえず前野は問 い返す。 「何のことかね?」 「ちなみに、一昨日は両脇から抱え込んで写真をとられた」  予想通りというべきか、望んだ答えは得られなかった。ますますもって訳が わからない。隣にいるみかんの方を見てみると、そちらも不思議そうな顔でこっ ちを向いていた。 「その前は暗殺者だった。軍を退役し、田舎で農業を営んでいた私のささやか な幸せな家庭をぼろぼろに破壊してくれた。その前は帝国の女スパイだった。 もう少しでクーデターが成功する所だったのに、お陰で革命軍は一網打尽にさ れた。さらにその前は百一匹で白地に黒ブチ、怒涛のように押し寄せてシティ は壊滅状態に陥った。さらにさらにその前はアトランティス帝国の……」 「って、何が一体どうしたの?」  困惑顔で佇む兄の横でみかんは至極もっともな疑問を口にし、勢いよく捲く し立てる結夜の言葉を止める。そこに至ってようやく、結夜は鬱々として深く 溜息を吐きながら事の次第を言ってのけた。 「いや、ここ数日前野さんが私の夢に出てきてね。いっつもいい所で邪魔ばっ かり……」 「知るかっ!」  一部始終を聞くともなしに聞いていた藤咲嬢は、何気ない風にこう呟いたと いう。 「わかった。六兎さんは前野さんに惚れはったんやね」  偶然その呟きを耳にした十条健一郎氏は、思わず口に溜めたお茶を吹出して しまったそうな。 # 莫迦話〜。 # 結局、一番収まりがいいのは莫迦話であるなあ。 た ただの婆さん ---------------- 「こちらが当社のお勧めする最新機種『BAR-MK III』となっております」  はっぴを着た店員が持ってきたのは和服を着込んだ背の低い、老婆であった。 「へえ、コレが噂のバアサンですか」 「はい、ユーザーの方々からはその様な愛称で親しまれているようですね」  店員が、なれた手つきでバアサンを起動する。ピロリンという電子音が鳴る と、バアサンの目に一瞬光が灯り、のそりと動き出す。 「結構ゆったりとした動作なんですね」 「はあ、オプションで高速稼動装置も取り付けが可能ですが……あまりお勧め は出来ませんねえ」 「というと?」 「だって、不自然でしょう。高速移動するバアサンなんて」  なるほどと、男は納得する。たしかに、俊敏な動きのバアサンなんていうの はどこか不自然だ。ジェット婆あとかならともかく、普通はゆったりとした動 きを期待する。 「あなた、見るだけじゃなかったの?」  赤ん坊を抱いた男の妻が、不安そうに袖を引っ張る。 「いや、でもだな。これからの事も考えると、一台くらい買っておいた方が良 いだろう。二人目のときにも使えるんだしさ」 「この後子供服も見にいかなきゃ駄目なんだからね」 「子供服なんてお前、姉さんとこに俊哉のお古があっただろ。それにどうせ、 すぐに小さくなるんだからわざわざ買う必要も無いって」 「さすが、旦那様は先見の明がおありで」  ここぞとばかりに持ち上げる店員を、妻がキッと睨みつける。だが、店員は そんな事くらいでは動じない。 「どうです、二人目や三人目のお子さんのためにも。ローンも四十二回まで可 能ですし、ここは一つご決断を」 「うん、オプションとかは付けれるのかな」 「あなた!」  柳眉を逆立てる妻を尻目に、男はもう買うつもりでいた。 「そうですね。元気ハウス社の『育児くん8』は基本で付いて来ます。あとは ミナミソフト社の『子守唄II』が、五千円追加で。折角ですからおまけとして 拡張モジュールの『だんご』も一つ付けましょう。これでたった三十二万三千 円ポッキリ!」 「へえ、案外安いね」 「薄利多売をモットーとしております。毎度どうもありがとうございました」  バアサンの頭に、毛玉のような『だんご』を取り付けながら、店員は満面の 笑みを浮かべた。  男の妻は、(カード購入のため物理的な重さは変わらないが、精神的に)軽 くなった財布を見つめて、深く溜息を吐いた。 「と、いうような経緯を経て今あそこにあるのが、あの育児用ロボット」  公園で遊んでいる老婆と、六歳くらいの子供を見つめながら、結夜は勝手に そう結論付けた。 「ただの婆さんやん」  長い長い前振りを大人しく聞いていたことについて色々後悔しつつ、健一郎 はただ一言、冷たくツッコミを入れたそうな。 # のっけから結夜の妄想から入るパターン。 # 二回は出来ないネタだけど、一回はやっていおかねばならないので書いてお # く。 れ レタスとキャベツとマヨネーズ -------------------------------- http://reny.hp.infoseek.co.jp/requiem/Iroha47_re.jpg # とうとうマンガもやってみる # あずまんが大王のパロディ〜。 そ その他の人々 ----------------  ぼんやりと街を見る。  通り過ぎて行く人の群れ。人の大半は、他の人にとっても風景の一部でしか ない。注目される事もなくただ過ぎていくその他の人々。なんとなくため息が 出る。  その姿が、自分達のそれと重なって。 「そう、注目されてはいけないのだ」  言葉にしてそっとつぶやくと、余計にうんざりとした気持ちになった。それ は業である。永遠の時を生きる者に科せられる。注目を集めてはいけない。奇 異の目を受けてはならない。ただ、日常の風景の一部から逸脱する事は許され ない。 一所に留まる事すら、それには許されないのだ。 「そう、あの群集のように在らなければならない」  羊の群れ。羊の群れ。  黒い羊は自ら白いペンキに塗れよ。 「許されない事なのか。日常を、果てることの無いぬるま湯の日々を望むのは」  永遠は無い。何処にも無い。あるのは虚ろな終わりの連続。それだけ。 「せめて、一時の安らぎを……」  唐突に、肩を揺らす感覚が結夜を現実に引き戻す。 「おい」  ふと見ると、待ち合わせの相手がそこにいた。苦笑して、謝罪の言葉を呟く。 「すまぬ、遠い所に行ってた」 「別にいいけどな。結夜がトリップしてんのはいつもの事だし」  諦めたように言うと、友人は結夜の肩を叩き、せっついた。 「ほら、さっさと立て。本屋案内してくれる約束だろ」 「ん」  軽く頷いて立ち上がると、結夜は己の自転車の元へと駆け寄った。 # なんか、結夜自分の世界に浸りすぎ。 # ちなみに、ここに出てくる友人Aは健一郎じゃありませんので悪しからず つ 吊り橋のまんなかで ----------------------  規則的なリズムで揺れる吊り橋はぎしぎしと縄の軋む音を立て、まるで公園 のブランコのようである。  ぶらぶら。不落不落。  常に不安定でありながら、決して落ちる事の無いそれ。俯瞰の風景は遠く手 に届かない絵画のようで、どうも現実味に欠けた。  嗚呼、ココカラ落チテシマエバ  アスコニ手ガ届クダロウカ 「何してんの、金眼」 「別に、黄昏てるだけ」  遠くを見つめながら呟くように返答する結夜に、必殺の回し蹴りが見事炸裂 する。 「黄昏てる暇があったらちゃっちゃと働かんか!」  という怒鳴り声は、今まさに落下している最中の結夜の耳に届く事は無かっ た。 # またもや結夜くん陶酔してます。 # ロマンチストって言うより自己陶酔型だね、うん。 # そして、短いのしか出来ないのでちょっと欝。 ね 値切るつもりじゃなかったのに -------------------------------- な 涙を舐める --------------  森からは葉擦れのざわめきが、天からは星々の煌きが、押し寄せるように降っ てくる。夜、銀色の三日月は何を射ようとかその弦を天高く引き、夜風は草原 を翔け、木々を揺らし少女の元へと馳せる。  頬を伝い、玻璃の煌きのような涙が落ちていく。薄淡い光を帯びた銀色の髪 が緩やかな風に揺れる。  それはまるで一枚の絵画のように美しく、そのまま時を止めてしまいたいと 思うほどの儚さを持っていた。 「何を泣いているの?」  誰もいないはずのバルコニーなのに声をかけられた。そちらを向くと、暗い マントを羽織った道化が立っていた。驚くほどの事でもない。これが最初に迷 い込んできた夜から、まるで約束でもしたかのように時折訊ねて来るのだ。少 女も、これこそ驚くべき事なのだが、何故かそれについて違和感を持たず受容 している。 「人が泣くのに理由が必要?」  特に意識もせず、可愛げのない言葉が口をつく。だが、その道化は気分を害 した風もなく、詠うように言葉を紡いだ。 「何事のも理由はあるんだよ。それを知っているにせよ、知らないにせよ」 「人が涙を流す理由と言うのは常に一つしかない。心が動かされた時。それだ け」  回りくどいやり取り。だが、少女も道化も、他ならぬその回りくどさを好ま しく思っていた。軽い剣劇のような言葉の応酬。一歩間違えれば相手を傷付け かねない。 「では」  道化が一撃を入れる。 「何に心を動かされたの?」  それが核心だった。場を満たすしばらくの沈黙。道化はどこか楽しげな様子 でそれを待っている。 「わからない」 「では、どういった感情が心を動かしたの」 「知らない」 「ならば教えて差し上げましょう」  道化は大袈裟な動作で、先程少女がしていたように夜の空を仰いで見る。 「それは多分感動と言うのです」 「感動?」 「そう、感動」  道化が、指の背で少女の涙を拭う。ふと気がつけば、金色の瞳が目の前にあっ た。少し屈めば唇が届きそうな、そんな距離に。不思議と、不快ではない。  だが、大方の予想通り道化はそのまま何もせずに身を離す。涙をふき取った 指を、その黒いマントにこすりつけて拭った。 「って、拭くのか」 「そりゃ、濡れたし」 「もうちょっと詩的な動作もあるでしょ」 「例えば?」 「舐めてみるとか」 「私がそれやったら変態だよ。もっと絵になる人とかがやらないと」  それを言うなら、夜中に乙女の部屋の窓に訪れるのは変態では無いのか。当 然の疑問も湧いたが、そう言う自分も最終的にそれを受容しているのだから人 事のように言えるものでは無い。 「それじゃ、銀の姫君」  さっと身を翻して、道化は夜空に身を躍らせる。影のように黒いマントは、 するりと夜の闇に紛れて、すぐに見えなくなる。  そして、銀色の髪の少女はもう一度だけ星空を見上げると、何事も無かった ように自分の部屋へと戻っていった。 # また銀色の髪の少女の話 # 結構暖めてるのに一向に書き出せないのだった。 ら ラストバトル2060 ------------------------  一人の老いた男が木陰に座っていた。一見はただの年寄りにしか見えない、 だが注意深く観察していると、その動作の一つ一つに全く無駄の無い。彫りの 深い容貌、片目には古い傷跡が残っている。見るものが見れば、その右腕も最 新式の高性能な義手であることも分かるだろう。  歴戦の古強者。一言であらわせばそういう者だ。  孫らしき子供が駆け寄ってくる。老人は破顔して見せると、嬉しそうに佇む 子供の頭を撫で、ある一つの方向を指差し何かを呟く。子供は大きく頷くとそ ちらの方へ駆けて行く。先にあるのは一組の夫婦。老人の息子夫婦で、子供の 両親。恐らくそんな所だろう。走っていく子供を手を振って見送り、老人は満 足げに溜息を吐く。  どこか疲れた動作で、首に下げたロザリオを軽く握り締めると小さく呟いた。 「Amen」  緩やかな風が吹いて、老人の顔に影が刺す。顔を上げると、そこには一人の 少年が立っていた。産業革命時代の紳士のような黒い礼服と、古風なマントを 羽織った一個の闇のような東洋人。その瞳に宿るのはどこか哀しげな光。老人 の、よく知る顔だった。  くるりと辺りを見回して、先に声を発したのは少年のほうだった。 「居住区の整備の賜物だ。今では、地球にいるのと錯覚を起こすほどに快適な 環境だよ」 「そうかい」  言われて老人も辺りを一瞥する。確かに、少年の言う通りそこの風景は地球 と寸分も違わない。むしろ下手な地球の都市よりも緑豊かで、快適そうな空間 であった。  ひとしきり辺りを堪能すると、老人は恨みがましい目付きで少年を見上げ、 愚痴るように呟いた。 「まさか、月にいるとは思いもしなかったよ。ここ二十年ばかり見付からない と思ったら」 「十八年程前からだ」  そう言う少年の容姿は控えめに見た所で二十を越えるようには見えない。だ が、双方ともそんな事は何の問題でもないように話を続ける。 「久しぶりだな、ジェロニモ」 「久しぶりだ、金眼」  それが双方の仇名であった。 「日本語を使うのは久しぶりなんだ。ちゃんと話せているか?」 「ああ、問題ない」 「そうか。それにしても何故月に? 宇宙開発は趣味でも無いだろう」 「珍しい体験をしたかったんだ。ただそれだけ」  軽く肩をすくめて見せる結夜の動作は、最後に会った時と寸分も変わってい ない。懐かしさに、老人は思わず言葉を漏らす。 「変わらないな、金眼」 「ああ、貴様もな、ジェロニモ」 「よせ、俺は変わったよ」  老人が自分で言っているとおり、二十年という歳月は容赦なく若さを奪う。 それこそ、吸血鬼である結夜でもなければ変わらない訳も無い。だが、結夜は その当然の主張に首を振る。 「いや、心根は変わらない。ずっとな。最初に会った時のままだよ」  約半世紀もの時に思いを馳せ、結夜は懐かしげに呟いた。老人は、少しだけ 口の端を曲げて小さく微笑う。 「それも、どうだか」  自嘲するような老人の言葉に、結夜は何も言わなかった。 「でも、間に合ってよかったよ」 「何がだ?」 「俺が死ぬのにだ」  言葉が止まる。人口太陽灯の光が眩しい。結夜は、何かを諦めるように深い 溜息を吐く。 「やはり、やるつもりか?」 「ああ、ずっとそうして来ただろ。この半世紀な」  老人は静かに懐から武器を取り出す。白くペイントされた、少々装飾過多な ロングバレルのリボルバー。実用の武器というより、単なる飾り物にしか見え ないそれが、確かに恐るべき凶器である事を結夜は経験から知っていた。  だが…… 「無駄だ。全盛期の貴様ならともかく、老いたその身では私に勝つ事は出来な い。それは分かっているだろう」  下手をすれば必殺の凶器に対して何の恐怖も抱かず、淡々と事実を告げる。 「確かに、そうだ。今の俺ではお前には勝てない」 「なら、なんで……」 「頼むよ、結夜」  老人は言葉を遮って、結夜と名を呼んだ。敵として認識し合った仇名では無 い。まだお互いが何も知らず、ただ友として在った頃に呼び合った、その名を。 「リスティ……」 「死ぬ時は闘って。そう決めていた。お前となら本望だ」 「……わかった」 「ありがとう、親友」 「親友か、そう呼ばれるのは半世紀ぶりだな」 「はは」  長い年月を越えて、お互いに笑い合う。その後は言葉はいらなかった。結夜 の爪が黒い刃となって閃き。リスティは引き金を引く。  最後の闘いが、始まった。 # 2060年の結夜です。なんか知らないところでドラマを繰り広げています。 # 本当は前野さんとかそういうのでやろうと思ったんですけど、他人のキャラ # を勝手に老化させて出すのは色々問題だと思ったので止めておきました。ど # うなってるんだろうなぁ、吹利の面々。 む 無の境地はどこにある -----------------------  見えない。何も聞こえない。  いや、正確に言えば視覚は目の前でひらひらと動かされる掌の像を捕えてい るし、聴覚は日常の奏でる雑多な音たちを捕えている。嗅覚は後ろに座る誰か の啜る液体が人間の血液であることを伝えているし、味覚は先程食べたチョコ レートの余韻を感じつつ、触覚は臀部に触れるクッションの柔らかさを教えて いる。  だが、その全てが素通りしていく。意識に触れない。五感は働いていても意 識がそれを認識しないから、それらは全く意味をなさない。  六識の内、最後に残るは意識のみ。それすらも段々と薄れていく。無。朦朧 と意識が霞んでいく。  その時、首が落ちた。 「痛っ」  ごろんと床に転がった頭だけではとっさに周囲の状況を判断するのは難しかっ た。それでも、とりあえず目の動く範囲で辺りを見回す。最初に目に入ってき たのは、カウンターに座ったままの首の無い自分の姿。そして、その横に座っ ている、先輩の黒崎沙耶。なんとなく、それだけで事態を理解する。 「人の頭を落とすのは野蛮ですよ、先輩」  肺が無いので声は出ないが、とりあえず口だけパクパクと動かす。それで言 いたい事がわかってくれたのか、ありがたくも沙耶は、結夜の首をサッカーボー ルのようにぽぉんと蹴飛ばしてくれた。壁に二、三回バウンドして見事首の所 にはまった。取りあえず元に戻れた訳ではあるが、この状況ではお礼を言うべ きか文句を言うべきか判別しにくい。 「ああ、もう少しだったのに」  両方癪な結果になるのは目に見えていたので、別の方向から話題を切り出す 事にする。 「もう少しって何が?」 「無の境地が」 「は?」 「だから、無の境地に達する事が出来たのに」 「……要するに、人の話も聞かないでぼーっとしてたって事」  そう言われると、言い返せなかった。  沙耶が拳を固める。やばい。変に捻ってみた所為で地雷を踏んでしまったら しい。 「どりゃあっ」  必殺の延髄蹴りが直撃。引っ付いたばかりの首がまた勢いよく吹っ飛ぶ。  壁にバウンドしながら考えた。無の境地なんて、所詮ぼーっとしているのと 大差ないのかもしれない。少なくとも、どっちも健康に悪そうである。結夜の 過ごしている環境の中では。 # ぼーっとしてる結夜です。 # 意識がなくなっても、第七識とかあるので、無の境地とはいえない気もしま # すが、結夜のやることなので深くは気にしないでください。 う うるさい人形 ---------------- ゐ イミテーションはどっち の のめりこみ症候群 お 面白いわけがない く 車が一台足りません や 山の中に男がひとり ま 真似ばかりしないでくれる? け 消し炭で作られた塔 ---------------------- 「私には夢が在った……」  厳かに語り始める結夜。しかし、いつもの事である。周りの反応は思いのほ か冷たい。 「へぇ」 「ふ〜ん」 「あっ、なにその反応! 人が折角隠された過去を話そうとしてるのに」 「六兎さん」  呆れたように千緒嬢は言った。 「隠された過去って言うのは、普通自分から言い出したりせず隠しとくもんと ちがうんですか?」 「まぁ、それは置いといて」  鋭いツッコミを、さらりと躱して結夜は話を続ける。 「私には夢が在った」 「……どんな夢なんだね?」  放っておくと話が続かない事を知っている前野が仕方無しに相槌を入れると、 結夜はうんと頷く。 「それは、太陽の塔に登ることだ」 「…………」 「…………」  しばし沈黙。程無くして、両者の脳裏に、その姿が浮かび上がる。両手を広 げたペンギンのような、宇宙人のような、アンテナのような姿をした、万博記 念公園に堂々と聳え立つ例のアレの姿が。 「ああ〜」 「何となく、気持ちは分からんでもないが……」 「そうやろ? という事で、去年の春頃、実際行ってみたのだ」 「……は?」 「だから、太陽の塔に。この体になったから、忍び込む事も簡単だと思ってな」 「まぁ、そうだろうねえ」 「まぁ、実際はそんな簡単な物じゃなかったけど」 「へ?」 「以下の文章は、一年前、私が始めて太陽の塔へ挑戦した時の体験を書き記し た物である」 「なんのこっちゃ」  草木すら寝静まる深夜。広大な夜の公園は不気味に静まり返っていた。先日 来の花見客も、桜の散り終えた今となっては最早居ようはずもない。当然の事 ながら辺りに人影はなく、月の光は静かに公園全土に敷き詰められた緑色の芝 を照らし上げている。  場所は吹田、エキスポランドすぐ横。と言うか外の万博記念公園である。目 の前に聳え立つ巨大な、十年来の獲物に、結夜は湧き上がる興奮を押し殺す。  そう、太陽の塔。月下にあっても太陽の塔。  何年も前、莫迦な男が立てこもって以来閉鎖されていた禁断の場所。おそら く、まともに生活していれば一生中を入ることは叶わないだろう。東京で言う 所の『勝鬨橋を上げる』に近しい行為であろうか。それに、結夜は挑戦しよう としている。時の流れに逆行する。愚かなる行為に。 「愚かと分かっていても、やめる事は出来ない」  嘆くように呟く。 「何故なら、私は人間だからだ」  それは業。人という種族の背負った、忌むべきもの。全身の血が強く主張す る。好奇心が、探究心が、冒険心が、塔へ入れと高く、高く叫ぶ。私はその声 に抗えないのだ。否、その声こそが私なのだ。 「いざ、往かん」  全身が、夜に溶ける霧と化す。目的の地はすぐそこだ。歓喜に躰が打ち震え る。おお、私はやり遂げる。やり遂げるのだ。そして、今、あの塔の中へ。  突然襲い掛かった剣撃に、電光の速さで身を引く。間一髪でその剣は私を貫 く事は無かった。  いや、違う。結夜は即座に否定する。最初から、当てるつもりではなかった。 今のはただの牽制だ。実体化し、剣を放った主を見つめる。それは、灼熱に輝 く赤金の鎧を身に纏った、一人の剣士だった。 「来たか、悪しき闇の民よ」  鎧と同じ色に輝く両刃の剣を差し向け、剣士は結夜を睨みつける。その身体 から発せられる強大な圧迫感で、動く事すら出来ない。停止しかける脳を酷使 して必死で考える。彼は何者だ。そもそも、何故自分の邪魔をする。答えは当 然の如く出てくるはずも無い。唯一、その男の纏う装備が、言う所のヒヒイロ カネで出来ているのではないかという推測だけが頭に浮かんだ。 「何者だ……」  辛うじて一言を捻り出す。すると、剣士は軽く眉をしかめた。 「知らぬのか? ずいぶんと間の抜けた闇の民も居たものだな。自らの敵の名 も知らぬとは。良かろう。冥土の土産に教えてやる。我こそが太陽の剣士アル ムヴェル。異界より喚ばれし塔の守護者アルムヴェルだ!」  名乗りを上げると、アルムヴェルは剣を上段に構えた。 「うわっ、ちょっとタイム、待った、StopStop! 共存共栄、おとうさんおか あさんを大切にしよう!」  いかん。これはいかん。話が訳の分からん方向に流れ始めている。焦りの心 が迫力に押される身体を無理矢理に突き動かし、声を上げる。アルムヴェルは 今度こそ訝しげに眉をしかめた。 「遺言か?」 「いや、違うくて! そもそも、何ですか!? その闇の民とか太陽の剣士とか」 「は? 貴様は塔の封印を解きに来た闇の民じゃないのか?」 「そんなわけ無いやん!」 「ふ〜む……」  アルムヴェルはばつが悪そうに頭を掻いて一言。 「いや、とりあえず話を聞こう」 「なるほど。つまり、貴公は幼少の頃よりの夢でこの塔に入ってみたかったと いう訳か」 「そうです、お願いします」 「残念だが、しかしそれは許可できない」  厳かにアルムヴェルは首を振る。結夜は尚も食い下がった。 「何故ですか、納得できる理由を話してください」 「理由か……良かろう。それで納得して帰ってくれるなら」  仕方無しに、アルヴェルムは語り始める。 「そもそも、太陽の塔とは封印なのだ。消し炭のように脆いな」 「何が封印されているんです?」 「闇の獣グー=ダルオム。我が世界ではそう呼ばれていた。そもそもの始まり は、40年前、この国の悪しき魔導師がグー=ダルオムを召喚してしまったこと から起こった事だ。太陽の剣士であるという強い業により共にこの世界に飛ば されてきた私は、この国の勇者とも協力してなんとかグー=ダルオムを倒した。 だが、闇の具現であるグー=ダルオムを完璧に滅ぼす事は出来ない。そこで封 印する事にした。黄昏の書にある太陽の塔を建てる事によってだ。この世界で 言うペンギンに酷似した聖獣、星鯨を模した巨大な像を立て、それより太陽の 力を受けグー=ダルオムの活動を完全に停止させる。万国博覧会など、それの ためのカモフラージュに過ぎん。巨大な封印の塔を建てるためのな」 「は〜、そりゃまたすんごい事ですねぇ」  あまりの突拍子の無さに、流石の結夜も顎が外れた。 「以来、ずっとこの塔を守っている。確かに封印の力こそ強いが、太陽の塔は グー=ダルオムの復活を願い、我が世界より時空を越えて訪れる闇の民たちに 対してはあまりにも脆い。それで私は、この塔を闇の民より守るべく毎夜戦っ ているのだ」 「それで、もしグー=ダルオムが復活したらどうなるんですか?」 「世界が滅びる」 「うわぁ」  まさに、とんでもない話である。普通に考えれば、信じられるはずも無い。 だが、目の前の剣士の実力は確かに物凄い物であり、そもそもこんな嘘をつい て何か楽しい事があるとも思えない。とりあえず、結夜は信じておく事にした。 「わかりました。そういう事なら仕方ないですね」 「すまんな、長年の夢を……」  突然、辺りに闇の気配が漂い始める。緊迫した声でアルヴェイムが叫んだ。 「走って、自らの住処へ戻れ。振り返るな。早くっ!」  その迫力に、結夜は迷わず従う。瞬発力は仲間内でもそれなりのものである。 数秒と断たずして公園の外まで駆け抜ける。どこか遠くで、爆発のような音が 聞こえた。 「……事実は小説より奇なり、かな?」  使い古された言葉を呟きながら、結夜は長年の夢をその日断念したのだった。 「と、いう事で貴方たちも太陽の塔に入ろうなんて考えないように」 「…………」 「…………」  冷たい沈黙と、刺さるような視線が痛い。一応、念を押しておく。 「いや、ホントだよ?」 「はいはい、っていうかそんな莫迦な事しようとするの六兎さんくらいでしょ」 「莫迦な事を言っていないで、勉強でもしなさい受験生」  当然の事ながら誰も信じてくれないのだった。  ああ、狼少年の午後。 # 意外に本当かもしれません。 ふ 踏まれた猫の物語 こ こわいかもしれない え えげつないよ て テキーラは夜に呑め あ 明日になれば、すべて さ 冷めないうちに召し上がれ き 君は頭が悪いのか? ゆ 許された罪のかたち め 面倒だよね み 見たね? し 指名手配の裏側に ゑ エスケープの合図を送れ ひ 暇を下さい三分ばかり も もしもの話 せ 台詞忘れた! す すみませんでした $$ **********************************************************************