こういったことには人より耐性があるとは言え、ベルナデッタもただのシスターで、探偵ではない。人探しというものに挑戦するのはこれが初めてで、従って手をつけることといえばまず沙耶子の家を訊ねるくらいしか無かった。  ベルナデッタ :「」  隆作     :「初めまして、シスター・ベルナデッタ。娘から話は聞い         :ている。私が沙耶子の父、志摩隆作だ」  ベルナデッタ :「初めまして、志摩さん。早速ですが、沙耶子ちゃんのこ         :とについていくつか伺いたいことが……」  隆作     :「あれの家出についてのことかね」  ベルナデッタ :「……はい」  隆作     :「突然のことで、」  隆作     :「妻はあれが六つになる前に死んでしまってね、世話は乳         :母に任せきりだった。私も仕事にかかりきりで、ろくに構っ         :てやることも出来なかったから。恨まれていても仕方ない         :とは思っているよ」  隆作     :「ところで、シスターは吹利本町教会の方だそうだが、あなたが出てきたとなると」  ベルナデッタ :「――? はい、そうですけど」  隆作     :「ということは、」    ベルナデッタ :「どうしてそれを……」  隆作     :「我が家も代々占事を司る家系でな、そういった裏の事情         :には聡いのだよ」  隆作     :「あんな娘でも私の子供だ、可愛くないはずがない。」  隆作     :「吹利本町教会か。ヴァチカンの精鋭揃いだと聞いていた         :が、あの様子では言うほどのことも無さそうだな。万が一         :の安全弁程度にはなってもらいたいものだが……」  狐面の男   :「何故わざわざお会いに?」  隆作     :「あの手合いにはそれが一番効く」  皮肉気に口元を吊り上げる男の目には、先ほどベルナデッタに語った時の痛々しい様子は最早欠片もない。  隆作     :「猫廻しにも断られた今、駒は多いに越したことはないか         :らな。放置すれば最悪、野良の能力者に狩られたというこ         :とにもなりかねん」  瞳に暗い炎を宿して、男は低く呟く。  隆作     :「あれに死んでもらうわけにはいかんのだ。少なくとも、         :奪われたものを返してもらうまではな」  背後から見つめる狐面の男の酷く冷めた視線には、ついに気付くことは無かった。